【羽村市】名主の暮らしを今に伝える。羽村市・旧下田家住宅の貴重なひな人形公開

東京都

羽村市郷土博物館内に移築された「旧下田家住宅」の建物は、もともと羽村市羽西(旧羽村)に所在した下田季吉氏の居宅を譲り受け移築したものです。記録により、弘化4年(1847年)に建築されたことが判明しており、この地方における当時の一般的な農家の姿を色濃く留めています。建物は延床面積約29坪(95.9平米)の入母屋造り・茅葺き民家です。建築後、一時期は「四ツ間型」へと間取りが改造されていましたが、移築に際して建築当初の「広間型」へと復元されました。本住宅とともに、かつてここで使用されていた生活用具や養蚕用具など、あわせて1,210点の資料も極めて良好な状態で保存されています。その歴史的価値が認められ、建物と民具が一体となって「国指定重要有形民俗文化財」に指定されました。

2026年3月 旧下田家住宅のひな人形 shimodake jutaku2

隣接した羽村市郷土資料館で開催されている「ひな人形展」の開催期間(令和8年2月7日~3月8日)に合わせて、この旧下田家住宅では、江戸時代の名主宅に伝わる質実剛健かつ華やかなひな飾りが再現されています。赤い毛氈の上には、ガラスケースに収められた内裏雛や浮世人形が整然と並び、傍らには桃の花が春の訪れを告げます。手前の漆塗りの膳には、積み上げられた菱餅や一対の蛤、色鮮やかなひなあられが供えられ、当時の農家の切実な願いと豊かな伝統行事の息吹を、重厚な古民家の空間と共に体感できます。

2026年3月 旧下田家住宅のひな人形 shimodake jutaku3

旧下田家住宅で再現された「ひな飾り」は、現代の豪華な多段飾りとは一味違う、当時の生活に根ざした素朴で力強い風情を漂わせています。背後の赤い毛氈の上には、ガラスケースに大切に収められた内裏雛や浮世人形が並び、職人の細やかな手仕事が静かな和室に華やぎを添えています。その傍らには、春の訪れを告げる桃の花が黒い花瓶に活けられ、厳しい冬を越えた喜びを象徴しているかのようです。
特筆すべきは手前の黒塗りの膳に供えられた品々です。現代のような三色の菱餅ではなく、白く厚みのある菱餅がうず高く積み上げられた姿は、当時の伝統的な供え方の形式を忠実に再現したものです。また、左右の殻がぴたりと合うことから夫婦円満の象徴とされる蛤(はまぐり)や、彩り豊かな供え物が丁寧に並べられ、娘の健やかな成長と幸せを願う当時の家族の温かな眼差しを今に伝えています。
この展示は、歴史ある建築空間と相まって、江戸時代の年中行事が単なる儀式ではなく、人々の暮らしの一部として大切に受け継がれてきたことを物語っています。

2026年3月 旧下田家住宅のひな人形 shimodake jutaku4

旧下田家住宅の板間に切られた囲炉裏では、赤々と燃える薪から白い煙がゆったりと立ち上り、かつての農家の日常を今に伝えています。この囲炉裏は、暖をとるためや煮炊きのための道具であるだけでなく、茅葺き屋根の住宅を維持する上で欠かせない役割を担っています。管理人の方のお話によれば、囲炉裏から出た煙は天井へと昇り、屋根を構成する茅や木材をじっくりと燻すことで、高い防虫・防カビ効果を発揮するそうです。この「燻煙」こそが、湿気の多い日本の気候から貴重な歴史的建造物を守り、何十年、何百年と持続させるための先人の知恵となっています。

2026年3月 旧下田家住宅のひな人形 shimodake jutaku5

庭先に目を向けると、柔らかな陽光を浴びて黄金色に輝く福寿草が、春の訪れを静かに告げています。寒さが残る土の中から力強く顔を出し、花を広げるその姿は、ひな飾りや温かな囲炉裏があるこの屋敷に、いっそうの情緒を添えています。

2026年3月 旧下田家住宅のひな人形 shimodake jutaku7

※取材協力ありがとうございました。

江戸時代の「ひな人形展」が開催されている旧下田家住宅はこちら↓

旧下田家住宅
住所
〒205-0012 東京都羽村市羽741
営業時間
9時00分~16時00分
定休日
月曜日(祝日の場合は開館)羽村市郷土資料と同じ

※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。

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