【瑞穂町】伝統の技と愛らしい「猫」が並ぶ!郷土資料館けやき館で企画展「多摩だるま」開催中

東京都

多摩地域の伝統工芸「多摩だるま」を紹介する企画展『郷土の誇る伝統工芸 多摩だるま ―意外と知らない今むかし―』が開催されています。
江戸時代末期、現在の埼玉県所沢市周辺で始まったとされる多摩だるまは、かつては養蚕農家の縁起物として重宝されました。現在は瑞穂町や立川市などで製造が続けられています。
説明パネルによると、企画展示室入り口の左右にある大きな多摩だるまは、木型で作るだるまとしては国内屈指の大きさで「特一番」と呼ばれています。あきる野市「二宮の棚ダルマ店」が地元の商店のために毎年二点だけ製作しているものです。

2026年6月 多摩だるま1-1

企画展示室入り口の左右にある大きな多摩だるま「特一番」

根岸ダルマ(瑞穂町箱根ヶ崎)
お腹には金色の線で模様が細かく描かれています。ふっくらとした白い顔に優しげな目元、小さな赤い口が描かれており、おかめだるまのような非常に穏やかで柔和な表情が特徴です。
會田ダルマ(瑞穂町箱根ヶ崎)
お腹には金色で「福入」の文字が堂々と書かれています。キリッと引き締まった力強い眉と、口元を真一文字に結んだ髭が特徴的で、伝統的なだるまらしい凛とした表情をしています。
山武(瑞穂町殿ヶ谷)
お腹には波打つような金色の模様が大胆にあしらわれています。他の二点に比べて横にふくよかで丸みのある形をしており、上を向いた大きな髭と、どこか愛嬌のある顔立ちが目を引きます。

2026年6月 多摩だるま2-1

左:根岸ダルマ 中央:會田ダルマ 右:山武

「だるまの目隠し」

だるまの目隠しは、購入したばかりの箔を保護するための白い紙です。説明プレートによると、願掛けをして目を入れる際に箔をはがしますが、上手くいかないことも多いようです。この箔は金ではありません。だるまがマスクのように目を覆われているのは、願掛けの瞬間まで目を美しく守るためです。

2026年6月 多摩だるま3-1

加藤文成コレクションの多摩だるま・張り子

色とりどりの可愛らしい人形たちは、郷土玩具の収集家として知られる加藤文成氏のコレクションです。調布市郷土資料館には約6000点に及ぶ膨大な加藤氏のコレクションが収蔵されており、今回の展示では調布市郷土博物館の厚意により、その中から状態の良い39点が公開されています。
多摩張子は、赤い「だるま」をはじめ、大黒天や恵比寿を思わせる縁起物、招き猫、白塗りの素朴な人形など、バラエティ豊かな品揃えです。戦前から戦後にかけて収集されたこれらの玩具には、現存しない製作者や製作地で作られたものも含まれ、失われた時代の職人の技がそのまま残されています。多摩だるまや多摩張子の歴史を知る上で、極めて貴重な資料となっています。

2026年6月 多摩だるま4-1

養蚕とだるまの深い絆

多摩や周辺地域では、かつて養蚕が盛んで、だるまは蚕の豊作を願う縁起物として農家に親しまれました。説明パネルによると、所沢市北野の田中家では、毎年4月19日に寺で多摩だるまを購入し、先代は底面にその年の蚕の収穫量を記録しました。2年後、両目を入れてお寺へ納める際、記録のある「だるまの底部分」を外して本体だけを納めました。手前の円形のパーツが田中家に残された「だるまの底部分」で、当時の重さを表す単位で収穫量が書き込まれています。外された底部分には紐がついており、ビニール袋が普及する前はだるまを吊り下げて持ち運ぶためのものでした。大きなだるまは昭和初期に箱根ヶ崎の根岸ダルマ三代目・根岸利夫氏によって作られたとみられ、毎年新しく買い換えるだるまとは別に、田中家の神棚に安置されていました。だるまは、豊作を祈るだけでなく、家族の歩みを記録する碑でもありました。

2026年6月 多摩だるま5-1

相州だるま

多摩地域のだるま作りが近隣地域に広がり、それぞれ独自の発展を遂げた様子を紹介しています。特に、本物の毛のような立派な髭を蓄えた大きなだるまが目を引きます。
相州だるま(神奈川県平塚市など)
神奈川県の平塚を中心に作られる「相州だるま」は、かつて厚木や小田原でも作られていました。多摩だるまと共通する特徴を持ちながら、華やかさを強調して作られています。現在は平塚市内の三軒の製造元によって作られ、神奈川県内で納められるだるま市などで販売されています。この技術は、現在の東京都武蔵村山市岸にあった「伊勢屋」から平塚へ伝わりました。

木型や職人の技術が国境を越え、各地で独自の魅力として発展した歴史を伝える貴重な展示です。

2026年6月 多摩だるま6-1

平塚市、本家長嶋達磨店の相州ひげだるま(右)

だるまと猫が織りなすユニークな張り子

多摩地域や川越市の職人が作った、だるまと猫を組み合わせたユニークな郷土玩具(張り子)が展示されています。猫はネズミを駆除してくれるので、養蚕農家にとって縁起物として親しまれてきました。

多摩張子 だるま抱き猫(會田だるま/瑞穂町箱根ヶ崎)
白い招き猫が、お腹の前に真っ赤なだるまをすっぽりと抱え込んでいる姿がとても微笑ましく、二大縁起物が一つになったおめでたい張り子です。
川越張子 だるま抱き招き猫(矢嶋美夏/川越市)
多摩の技術や木型が伝わったとされる川越で作られたもので、地域を越えた職人のつながりを感じさせる一品です。
多摩張子 猫黒(會田だるま/瑞穂町箱根ヶ崎)
奥側に見える黒い猫の張り子で、ツヤのある黒い体にキョロリとした目が個性的で引き締まった印象を与えます。
多摩張子 招き猫(根岸ダルマ/瑞穂町箱根ヶ崎)
左手前にある黄色と黒の縞模様(トラ猫風)の張り子などで、首元に赤いドット柄のスタイ(前掛け)をつけ、どこかおどけたような愛嬌のある表情を浮かべています。

伝統的な「だるま」の製造元が、こうした可愛らしい動物の張り子も並行して手がけている点に、当時の人々の暮らしに寄り添った職人の遊び心と柔軟な技の広がりを見て取ることができます2026年6月 多摩だるま2-1

※取材にご協力いただき、ありがとうございました。

多摩地域の伝統工芸「多摩だるま」を紹介する企画展が開催されている瑞穂町郷土資料館 けやき館はこちら↓

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